far beyond
06
「えっ?兄さんが??」
あの後、ロイとリザとハボックは司令部へと戻ってきていた。そして、アルフォンスにことの次第を説明した。
「本当にごめんなさい。私が付いていながら、誘拐されてしまって。」
「俺も護衛とか言って結局守れなくてすまねぇ。」
「今回は私のミスだ。すまない、アルフォンス君。」
3人は説明し終わると、アルフォンスに向かって頭を下げた。
「あっ、いいえ。気にしないでください。兄さんなら大丈夫ですよ。頭を上げてください。・・・・・・・・・・でも、今回はヤバイかもしれません
ね。」
「どういうことだい?」
アルフォンスの最後の言葉に疑問を感じたロイはアルフォンスに聞いた。
「兄さん、昨日からちょっと具合が悪くて、今日も熱があったんです。だから断ったら?って言ったんですけど、兄さん聞いてくれなくて。
」
「そうか、だから顔色がよくなかったのか。アルフォンス君、君のお兄さんはパーティで1度倒れたんだ。教えていてくれたらそのまま休
ましたのだが。」
「倒れたんですか?!すいません迷惑をかけてしまって。兄さん頑固ですから、言っても休まないと思います。それより、早く兄さんを
助けに行きましょう。」
「そうだな。さっき襲撃してきた奴等の1人を捕まえて吐かせたところ、どうやら軍の上層部がからんでいるようだ。」
「大佐!!」
ロイが丁度アルフォンスにいい終わったときに上層部を調べるよう命じていたファルマンが部屋へ入ってきた。
「報告します!調べた結果、キャリー・スティー准将が最近テロ組織と関わっていることがわかりました!」
「あいつか・・・・・・・・。」
「怪しいっすね。間違いないんじゃないっすか?大佐。」
「どういうことですか?」
「さっきのパーティで大将が1人になった時に大佐の婚約者って知っていたのにナンパしてきて無理矢理大将とダンスしてた奴なんだ。
でも、その後将軍にお帰り願えられてたけどな。」
「へぇ。そんなことがあったんですか。あっ、でも、誘拐すると言っていたのは将軍の娘さんじゃないんですか?」
アルフォンスは疑問に思ったことを素直に聞いてみた。
「それがわからないんだ。確かに最初は将軍の娘を誘拐すると言われていたんだが。奴等はなぜ将軍の娘を誘拐しなかったのかわか
らない。」
「それはエディ様があなた様の婚約者様だとわかったからです。」
そこに突然第三者の声が割り込んできた。
「イリア嬢・・・。」
その場にいた全員が声のした方を向くと、そこには話題の主であるイリアがいた。
「エディ様が瓦礫から私くしを救ってくださったあと、エディ様はお倒れになられました。ですから、私くしが膝枕をして
「助けがくるまでお休みになってください。」と言ったんです。そしてそのまま気を失うようにお眠りになられました。そのすぐあとでしたわ
。男が2人瓦礫の上にいました。男達は私くしを閉じ込めるために瓦礫を壊したと言ってました。そして、私くしの膝で寝ているエディ様を
見つけ、私くしを動けないようにしてエディ様を抱き上げ「こいつは誰だ?」と聞いてきました。でも、私くしは答える気は毛頭ありません
でした。でも、男達がエディ様の頭に銃口をあて、「言わないとこいつを殺す。」と脅してきたのです。私くしが「ロイ・マスタング様の婚約
者様ですわ。」と答えると、男達はロイ様の婚約者様だとわかるとますます好都合だと申しておりました。申し訳ありません、ロイ様。私
くしのせいでエディ様が誘拐されてしまって。私くし、それを言いたくて。」
イリアは一気にあの瓦礫の中での状況を説明するとロイに向かって頭を下げた。
「頭を上げてください。それはこちらのミスです。あなたのせいではありません。」
「でもっ!!」
「あの・・・・・・・・。」
イリアが反論しようとしたときに誰かの声が割り込んだ・・・・・・・アルフォンスだった。
「あっ、お話し中すみません。はじめまして、僕こんな格好してますけどエディ・カーティスの弟のアルフォンスっていいます。あの、姉さ
んは大丈夫だと思います。」
「え・・・?」
「姉さんはあれでも丈夫なんですよ。それに折角イリアさんを守ったのにイリアさんが自分のせいだと言えば姉さんが身体を張って助
けた意味がなくなると思います。姉さんはイリアさんにそんなこと言って欲しくて助けたのではなく、イリアさんを助けたかったから助け
たんだと思います。それに、姉さんなら大佐たちがちゃんと助けてくれますよ。」
「ああ、必ず助ける。」
その顔は安心するような笑顔があった。
「そうですわ。お父様から伝言を預かっております。『第8倉庫が怪しい。捜索する許可を与える。』だそうですわ。」
「!!それは助かる!ホークアイ中尉!ハボック少尉!付いてきたまえ!ファルマン准尉はここに残りブレダ少尉と
フュリー曹長と共に何かあったときの対処にあたってくれ!」
「「「はっ!!」」」
「大佐!僕はどうしたらいいですか?」
「アルフォンス君はここでイリア嬢を守っていてくれ。いつ誰がくるかわからんからな。」
「わかりました!」
「イリア嬢。ここでアルフォンス君と待っていていただきたい。」
「そのつもりでいます。必ずエディ様を連れて帰ってきてください。私くしあの方とお友達になりたいですわ。」
「ええ、必ず。彼女も喜ぶと思います。行くぞ!!」
「「はっ!!」」
ロイとハボックが出ていった後、リザはアルフォンスに近づいて小声で言った。
「アルフォンス君。ごめんなさいね。私がお願いしたせいであなたのお姉さんを巻き込んでしまって。」
「いいえ、中尉のせいじゃないですよ。中尉が言わなくても姉さん、パーティに行っていたと思います。それに、僕も姉さんにたまには女
の子に戻って欲しかったから。」
「そう言ってくれるとありがたいわ。じゃあ、必ずエド君を連れて帰ってくるわ。」
そして、ロイとハボックを追いかけて、部屋からでていった。
少しときはさかのぼる―――――
第8倉庫―――
その中の一室から男の声がした。先ほどのエドワードを誘拐した男2人ともう1人男がいた。
「言われた通りさりげなく将軍の娘でじゃなくロイ・マスタングの婚約者様を連れてきたぜ。」
「ああ、よくやった。」
「しっかし、なんでまた人質を変更したんだよ。」
「私がこの娘が欲しかったからだ。それにロイ・マスタングがこの娘に惚れこんでいたしな。あいつを亡き者にするチャンスだ。」
「まぁ、別にいいけどな。俺たちは軍に仕返しができれないいだけだからな。」
「ああ、誰でもいいから軍の奴等を殺りたいだ。」
「それにしても、この娘かなりの美少女だな。」
「惚れるなよ。」
「さぁな。」
などととぼけながら男2人はその部屋を出て倉庫の奥へと行った。
「やっと手に入った・・・・・・・。」
エドワードをベッドに寝かし、その顔を見つめた。
「ん・・・・・・・・・・。」
その時、エドワードの瞼が震え、ゆっくりと目を開いた。
「ここは・・・・・・・・・・。」
「目が覚めましたか?」
「え・・・・?」
エドワードが声がしたほうを向くとそこには見知った顔があった。
「キャリー・スティー准将・・・・?」
「私の名前を覚えていてくださいましたか。光栄です。」
ニッコリ笑ってそう言った。
「ここは何処ですか?」
「あなたが気にするような場所ではありませんよ。それより・・・・。」
キャリーがそっとエドワードの手をとり笑顔で言った。
「私はあなたが好きです。」
「えっ?」
「あなたがマスタング大佐の婚約者と知ってはいますけど、あの時あなたを見たときから私はあなたのことが好きなんです。」
「困ります!」
「しかし、あなたは此処からどこにも行けない。私とあなたの2人だけだ。」
「!!!」
そう言われた瞬間に、エドワードはバッと起き上がり、その際、一瞬めまいがしたがなんとか耐えて取られていた手を思いっきり振りほ
どき、壁際へと逃げた。
「此処はどこだ!俺をどうするつもりだ!」
「それがあなたの本来の言葉使いですか。此処は第8倉庫の一室ですよ。あなたを人質にロイ・マスタングを亡き者にする。そして、あ
なたを手に入れる。」
「残念ながら俺は大佐の婚約者じゃないんでね。」
「ほう。それは良いことを聞いた。」
「それに、俺の名前はエドワード・エルリックだ。」
「エドワード?まさか、鋼の錬金術師か?!」
「ああ、そうさ。じゃあ、覚悟は出来たんだろうな。っ!!」
手を合わせて練成しようと思ったときに、突然頭痛が襲い、よろけて壁にもたれかかってしまった。
(くそ〜、頭痛ぇ〜・・・。風邪がひどくなってきたか。こんな時に・・・っ!!)
エドワードが頭を抑えて、頭痛をやり過ごそうとした時。いきなり腕を引っ張られ、ベッドに倒れこんだ。その上からキャリーが両腕を押
さえ込み、動けないようにした。
「くそっ!!離せ!!」
「まさか、鋼の錬金術師が女の子だったとはね。」
「なっ?!俺は男だ!!」
「嘘はいけないよ。こんなかわいい男がいるはずがない。」
「かわっ!!」
「ロイ・マスタングの婚約者じゃないのなら、力ずくで私のものにするしかないな。」
「ヤダっ!!離せ!!!」
もちろん女が男に力で敵うはずもなかった。
「無駄な抵抗はしないほうがいい。」
そう言って、顔をエドワードに近づけてきた。エドワードはぎゅっと目と瞑り、知らずうちに助けを求めていた。
(助けて!大佐!!)
「鋼の!!!!!」

